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〈古典とは?〉

古典芸術という時の、古典とは何だろうか。

1.書物において、古典とは、知恵を伝承するものである。


 生まれるたびに、知恵や知識や経験がゼロに戻るのが人間である。もしある人の知恵が次に生まれる人にすべて継承されていくなら、孔子やアリストテレスといった賢者より以降に生まれた人は、すべて孔子やアリストテレスと同じ知恵と頭脳を持つようになっているはずである。しかし、実際には、全くそうではない。新しく生まれる人は、常にリセットされて生まれてくる。
 そこで重要なのが、先人により書き残された「古典」である。「古典」として伝わる彼らの著作は、彼らの一生涯の知恵と頭脳とエネルギーが詰め込まれている。一生涯かけて積み上げたそれらを学べるのが「古典」である。

2.芸術において、古典とは、感覚的経験を伝承するものである。


 ゴッホの絵、バッハの音楽は、それらの人が捉えた特別な感覚的経験を、精緻・明確に示した作品である。表現された感覚が、特別なため、価値があり、死後も享受されてきている訳である。各時代の人の努力により保護され、伝承されることにより、作品は残ってきた。価値が認められた作品ほど、大切にされるため、後世に残りやすい。作品の伝承により、そこに表現された感覚的経験も伝承される。

3.古典は、人間の根本問題に触れる内容を持つ


 古典は、それが長年伝わってきたからには、時代的にも地域的にも普遍的な人間の根本問題に触れる内容を持っているはずである。
 
4.一方、前提とする考え方・感覚が現代と異なる面もある。


 古典は、普遍的内容を持つが、一方で、それらの制作者は特定の時代・地域の人であり、その時代・地域の習慣的考え方や特殊な感覚を、作品に反映させていることも多い。

5.古典は、現代の作品の創造余地を残している。


古典には、現代と異なる特殊な感覚が反映されているからこそ、それに対するものとして、現代において、現代の考え方や感覚を取り入れる形で、新しい作品を制作する意味がある。

6.古典は、普遍性と特殊性を併せ持つ。


 つまり、古典には、人間に関する普遍性と特殊性の二つの層が混ざっている。

7.古典と文化には相互的影響関係がある。


 文化とは、各時代、各地域で共有されている行動様式・生活様式を指す。
古典は、その共有されている行動や生活を元に、生み出されることがある。その意味では、古典は文化を具体的物体にしたものの一つ、と言える。逆に、古典は、長年伝承される中で、文化の形成や普及に影響を与えることもある。

8.古代の古典は複数人、近代の古典は一人に帰属することが多い


 古典の中で、古代の作品は、仮にそれが特定の人(書物で言えば孔子、孟子など)の作と伝えられていても、現在に至るまでに複数の人の手を経て、整理改作・修復がされながら形成されてきたものであることが多い。しかし、近代の古典は、特定の人に属することが明確な場合が多い。

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