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YouTubeの実演の場としての特徴

 演奏者の仕事の一つは、ある作曲家のある曲について、過去の演奏を先行研究として、そこで行われている演奏表現を学び、その上で、よりその曲の特性を明確に表現する演奏を試みることである。そしてその演奏は、演奏会、録音等何らかの形で、実演される。YouTube等のヴィデオ投稿サイトは、その実演(演奏発表)の場として、どういう意味が見出されうるか。言い換えれば、投稿サイトには演奏のLive映像などの投稿がすくなくないが、それが聴き手にとってどういう価値をもつか。


 演奏者の側としては、CD等の録音と性質はあまり変わらない。聴き手の側としては、自宅の自分の部屋の、普段別の作業にも使用しているパソコンを用いて聞く形になる。パソコンの前に本を置いて、それを読みながら聴く、というような形で、他の普段の生活行為も行う中で聴くことがありうる。これは演奏会で聴くときのスタイルと異なっている。また、CDはCDプレーヤーという専門機械を使用して聴くため、自分の部屋の中でであっても、パソコンで聴くより、聴くことに集中しやすいだろう。


 Youtubeのようにパソコンを通じて聴く聴き方には、つぎの特徴がある。
1 他の普段の生活行為も同時におこないながら聴く。
2 パソコンの動作音が聴くのを邪魔する。
3 パソコン・インターネットという作業の迅速さが特徴の媒体上で聴く結果、演奏が早く終了することを求める意識が生まれ易い。
4 YouTube等では色々な投稿が目に入る結果、色々順に見いていこうとする意識が生まれ、一つのものには集中しにくい。終わるまで待つことが気分的に行いにくい。


 したがって、Youtubeを実演の場とすることは、
1 無料で使える。
2 演奏を記録として保存する場として使える。
というメリットともに、聴き手の状態を考えれば、つぎのデメリットがある。
3 時間をかけて深く味わって聴くことがされにくい。
4 演奏の冒頭だけで、演奏の良し悪しが判断されてしまう。
5 録音の音質や聴き手の再生機器の性能が低いことが、演奏の良し悪しそのものに結び付けられてしまう。


 このようなことを考えると、Youtubeに録音を載せるのは、録音の音質に十分注意をすることや、動画のビジュアル的な作り方で惹き付けるかを、考慮しないといけない。

 

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